「みんな、今日はイヴなのに来てくれてありがとうね」 数学の先生が最後にそう言うと、クラス中から笑い声が起きた。 先生、イヴだからって必ずしも予定があるとは限らないんですよ。 内心そう思ったが、口にも顔にも出さずに私は席を立った。  Twinkle and twinkle  ―この手に 光を―  1 冬休みに入ってすぐ、一週間の課外授業があった。 文句を言う友達もいたけど、私は全部の授業に出席した。 最初は半分意地だったけど、今となっては達成感の方が大きい。 うん、やっぱり真面目に出て良かった。 冷えた廊下をひた進み、昇降口まで辿り着いた所で声を掛けられた。 振り向くと、小柄な男子が両手を後ろに組んで立っている。 「小島君?」 名前を呼ぶと、「やっぱりそうだ」と返ってきた。 「お疲れ、雛森さん」 「小島くんも」 小島水色君。同じクラスの男子で、課外授業も真面目に受けていたっけ。 薄暗がりで一瞬誰だか分からなかったけど、特徴のある髪型と声色で気が付いた。 他愛の無い言葉を交わしながら靴を履き変え、校舎を後にする。 校門まで歩いた所で、小島君の足が止まった。 「雛森さん、緑山公園のイルミネーション、見て行かない?」 「イルミネーション?」 「うん。イヴだし」 今日はクリスマス・イヴ。しかもイルミネーション。 晴天の霹靂。 何、これって、もしかして。―――でも、でも、まさか。 「あ、違うんだ。僕、待ち合わせしてて。雛森さんも公園の方から帰ってるでしょ?」 「え、あ、ううん、そういうことじゃ・・・。うん。」 私の顔を見て察したのか、小島君は慌てたように否定した。 淡い期待は瞬時にしてはぐらかされた。驚いたけど、うん、平気。 返事は支離滅裂だったけど。 とりあえず、一緒に公園まで行くということでその場は収まった。 ささやかながらも、街中の通りにはクリスマス仕様の電飾が施されている。 人工的な光でも、不思議と心が安らぐ。 「灯り・・・綺麗だね」 「うん、綺麗だね」 しばらく歩いたが、会話はそれっきり。 でも、再び訪れた沈黙を破ったのは小島君だった。 「こうして歩いてるとさ」 「うん」 「僕達、付き合っているみたいだよね」 ―――to the next story (2005/12/19)